Prologue
2010年8月は猛暑で熱中症により150人を越える死者が出ました。
8月のある昼過ぎに新宿駅近くのカメラ屋さんに涼みがてら入りました。
場所が良いので、狭い店内にはいつもお客さんが入っています。
まず目に付いたのがAF Nikkor 35-70mm/2.8 中群にカビありのジャンク。
大口径で高い解像力を持ってはいますが他社の広角側は28mmからなのに対して
35mmからとなっており、28mmからの大口径ズームを求めるニコンユーザーが
TOKINA AT-X AF PRO 28-70mmを使用していたのは有名です。
解像力の高さを確かめたいと思いましたが、よく見たら当たりで鏡胴先端枠が
変形しておりフィルター装着は不可でした。
枠の修正まで必要だと一気に買う気を失いました。
さらに広くはない店内をじっくり見て回り、マスター雲台を見付けました。
価格は\500で状態は大きな傷や変形もない実用レベルです。
マスター雲台はプロユースが多いので、外観の程度が悪いものは酷使された後の
消耗品(廃棄品)と考えた方が良いのです。
フリーターン雲台はワンハンドルを締めていくと、初めに上下パンが固定されますが、
この時点では左右のパンはフリー状態のままです。
さらに締め付けると左右のパンが固定されるようになっています。
その為、固定締付量(=締付力)が、一般的な3ウェイ雲台に比べて必要になるため、
パンハンドルのネジ部に大きな負担がかかります。
この雲台のパンハンドルを締め付けるとザラザラとした感触になっていましたが、
締め付ければしっかりと固定されるので現役続行可能と判断しました。
もちろん分解清掃をする事で、操作感がどれ位良くなるのか試すには格好の素材
である事もポイントでした。
SLIK
Master Head
パンハンドルのザラザラとした感触の原因はネジ部分の汚れです。
グリースと金属粉が混じり黒色になっていました。
脱脂洗浄したところ綺麗になりました。
ねじ山の崩れや摩耗も心配ないようです。
分解の最初はSマークが入った樹脂キャップを外しますが、
キャップはそのまま上に持ち上げる事で外せます。
雲台を分解するためにセットスクリューを外します。
上の画像のようにネジロック処理がされていますので、
慣れていない人はナメやすいので注意が必要です。
溶剤で溶かすか丁寧に緩めて下さい。
取り外したセットスクリューです。
各パーツに分解できました。
回転方向の摺動部にはグリースが残っており、
アタリも均一で問題はありません。
アルコールで脱脂処理しました。
状態は良いので手を入れる必要はありません。
上下方向の摺動部にもグリースが残っており、
アタリも均一で問題はありません。
ここにある割り締めは左右回転方向固定用のものです。
脱脂処理後
気になるような摩耗もないので良い状態です。
本体の摺動部分をクリーニングします。
特にパンハンドルのネジ部は念入りに行いました。
ネジ溝の汚れがすっきりきれいになりました。
Lubricate
割り締め方式で固定力が高いので、汎用のリチウム石鹸グリースをを塗ります。
薄く伸ばして組付後にはみ出た部分は拭き取ります。
上下摺動部分にも薄くグリースを塗っておきます。
元通り組み上げて完了です。
全ての作業が終わり、誇らしげなSLIKのエンブレムもちょっぴり輝きだしました。
スポーツや報道用に活躍した往年の姿です。
F's
Impression
プラットホームの側面には90度ごとに目盛りがあります。
パノラマ撮影にするにはもう少し細かい目盛り必要なので、
何か目的があってのことだと思います。
小型のエクセラフォー雲台と比較すると大きさの違いが良く分かります。
GITZO
G312に取り付けた時のバランスも悪くありません。
手持ちの長玉、SIGMA 50-500mmをセットしてみました。
分解清掃により、なめらかな動きからしっかりとした固定まで、
全ての操作感が格段に良くなりました。
スポーツ撮影=長玉ですから、重量のある機材にも対応していますので
安定感は抜群です。左右パン時のワンハンドルの操作性も快適です。
古く作りが良い雲台の、なめらかな動きは良いものです。
※全ての雲台が簡単に分解出来る構造ではありません。
※内部に樹脂製パーツがある場合は、樹脂用グリース・オイルを使用して下さい。
当方は一切修理は請け負っておりません。
ジャンク品は健康に良くありません。
良品を買いましょう〜
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