[2007.5.31]

MD-15 Motor Drive

 

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Trouble

ジャンクのMD-2MD-12を修理してからというもの、
ジャンク品の修理が楽しくて!
新しい趣味になりつつあります。

MD-15はMD-12を修理してから狙っていました。
FAでモードラをガンガン使うという訳ではありません。

FAではMD-12と15が使えますが、これはニコンの良心の表れでしょう。
ちなみにFAはマルチパターン測光を搭載した先進性のあるカメラで、
好きなカメラの一台です。

MD-15はFA専用でMD-12と最も違う点は、
MD-12までのカメラとモードラ間の機械式連動ピンではなく、
電気接点による連動になった事です。

2007年4月時点で中古カメラ店にて日常使いの動作品であれば、
1万円を下回るプライスタグが付いています。

モードラの中身がMD-12に比べどう違うのか知りたいだけですので、
出来るだけ安く入手したいという思惑がありました。

結局はバラしてみるので、修理を兼ねてジャンク品を購入するのが
趣味と実益を兼ねた選択だったのです。

購入したのはMD-15は、電池の液漏れがある不動品です。


入手時の状態ですが、多少の傷はあるものの、
スレもほとんど無く「外観」はきれいな方な良品レベルです。

この外観がきれいというのが重要です。

 きれい=大事にされていた
  ↓
 手荒く扱われていない
  ↓
 機械系の状態が良い

修理する箇所が少なくて済む可能性が高いのです。


ジャンクなのですから、電池室と電池ホルダーMS-4は、
電池の液漏れによる緑青の析出と端子腐食があります。


MD-15本体の端子部分も緑青の析出と端子腐食があります。
この緑青による腐食だけなら、分解しなくても直りそうですが・・・

世の中はそんな甘くはなく、立派なジャンクでした。
外から見るだけでは分かりませんが、かなり深刻な状態である事が判明。


深刻な事とはフィルム巻き戻しスライダーが完全に固着している事です。

この事はMD-15の電池室以外でも電池の液漏れによって、
上の赤丸部分の内側にかなりダメージがある事を示しています。

ある意味でMD-2より内部の状態は悪そうです。
ジャンク品を買ったのですから、リスクは自分持ちです。

今回は正統派の電池液漏れの修理方法を行いますので、
緑青はちゃんと酸洗して落とし、メッキ仕上げを行います。


まずは上蓋を外してみます。
基板には液漏れの影響もなく綺麗な状態を保っています。
電気系はMD-12から世代が新しくなっています。


続いてグリップ、電池室、本体とMD-15を3分割にします。
基本的な筐体構成はMD-12と同じです。


電池室、端子ともに液漏れ跡がかなりすごいです。
白くなっている部分では、アルミが腐食による浸食されています。


電池室側より本体モーター側の方の緑青と腐食がひどい状態です。
この緑青によってフィルム巻き戻しスライダーが固着しています。


モーター、ギヤにも緑青が出ていますが、
動作に支障が出る程ではなさそうですので軽症な方です。


MD-15本体の底面です。(基板がある裏側)
こちらは液漏れの影響はありません。

酸洗(さんせん)

酸洗の写真は作業する際に手が空けられなかったので撮っていません。

錆とは酸化の事ですから、酸性の液体で錆や酸化膜を除去する事を、
酸洗(い)といいます。

メッキの際の下地処理の際には、脱脂→酸洗→水洗は必須工程です。

今回は電池の液漏れによる緑青を除去するのがメインですので、
通常の行われる銅の下地処理のように硫酸や塩酸ではなく、
緑青が良く溶ける有機酸を使用します。

GICO氏には有機酸として、美味しいバルサミコ酢(特に数年もの)や
ワインビネガー等の、古いカメラの時代にマッチしている酢と、
ピンクの塩で有名な岩塩を少々というレシピを紹介しました。

私は、と言えば・・・酢酸(醸造酢)にパーツを入れて歯ブラシでゴシゴシと
緑青を大まかに落とし、その後はしばらく漬けて酸化膜を溶かします。

銅のパーツであれば銅色に輝きだしたら水洗します。
そのまま手で触らないようにしてメッキをかけます。
メッキの話は後ほど。


電池室の修理に入ります。
まずは緑青を酸洗して落とします。
続いて腐食による凹凸をサンドペーパーにて整えます。
電池室なので外からは見えませんので、けっこう適当です。


外回りにマスキングを施してからスプレーにて塗装しました。
手を抜いた割には、綺麗に仕上がりました。


電池の端子部分は、かなり緑青が出ており、
腐食も進行しているので長めに酸洗を行います。
上の画像は酸洗後の端子ですが、ピンぼけでした。


巻き戻しスライダーの固着部分は、酢酸に漬けて緑青を溶かします。
かなり腐食していたので時間をかけて酸洗した結果、
表面が溶けて一部で銅色が出ています。

固着がとれたら、巻き戻しスライダーをパーツにまで分解します。


部分的に残っている緑青を酸洗する事で、
下地を整えます。

鍍金(めっき)

酸洗が終わった銅のパーツは、みるみる酸化していきます。
上の写真は作業後のものです。

銅であればそのままニッケルメッキが出来ますので、
MD-2の修理と同じめっき工房にてメッキをかけます。

自宅でメッキが出来るもので10年前に東急ハンズで購入したものです。
ジャンク品の電気部品の修理には欠かせません。

電極の錆を落としてもすぐに酸化膜が出来てしまいますから、
そのままの状態ではすぐ使えなくなります。(経験談)
面倒ですがメッキする事で、長く使えるようにする事が出来ます。


酸洗後の酸化防止の為のニッケルメッキを行った状態です。
銅色から銀色に変わったのが分かるでしょうか。
巻戻しスライダーのパーツの修理は完了です。


続いて電池の端子基板を酸洗します。側面側


ダイオードがある方は酸洗したら、厚い銅板がフレームになっている事が判明。


厚い銅板も酸化防止処理の為、ニッケルメッキを行います。


MS-4の端子で液漏れに腐食と緑青があるのは、
奥側のプレス端子部分のみです。外して酸洗します。

上の写真は酸洗後の端子ですが、メッキに変色があるのと、
右側の凸部に腐食による浸食が起きています。


浸食部分は修正の必要は無いと判断し、
ニッケルメッキを行い仕上げます。


酸洗→メッキと仕上げた部品を組立ると、輝いて綺麗に仕上がっています。


ギア周りは問題無しと思っていましたが、実は問題があり動作が不完全でした。
MD-12のような強制動作方法が分かりませんが、
機構から推測して試してみると「少し」動きました。

どこかで固着が起きているようです。
モーターから順にギアの動きを追って、巻上げ爪の反復機構に問題がある
事を突き止めました。
注油して固着が直るまで手で繰り返して動かします。

Trouble_2

その際に1箇所回転部分のパーツを折ってしまいました。
ギアにある呼び爪で、2×1mm程度の大きさです。(赤い丸の突起部分)

爪が無くても良いかと思っていたのですが、
巻上げが最後まで出来ないのです。

理由は爪がカメラの巻上げ軸を少し回転させて
その後ギア同士が噛み合って駆動する為に、
爪が無くてもギア同士が噛み合い巻上げられまずが、
爪で回転させていた角度分だけ巻き上げが足らない為です。

こんな小さい破片をどうやって直したかというと、
MD-2の修理で実績のあるステンレス半田で接着しました。
耐久性が心配ですが連写しても問題は起きていません。

[追記] 爪が外れました。

しばらく使っていなかったのですが、
空撮りしてみると巻上げが出来なくなりました。

原因は予想していた通り、半田が外れた為です。
半田では耐久性はありませんでした。

耐久性を考えて再修理をしなくてなりません。
本来なら部品かモジュールごとの交換が必要ですが、
その為にもう1台MD-15を買う気にはなれません。

出来る事なら溶接で盛って整形したいのですが、
部品が小さいですし面倒な話です。

考えた結果ネジの頭を利用して爪の代わりにすることにします。
使用したのはM1.7なべネジです。(上の写真の赤丸)

ネジの頭と爪の位置を合わせて下穴を開け、
タップを切ってM1.7ネジを取り付けます。


M1.7やM1.6で頭の大きさやネジ長が異なるのものを用意し、
回転動作させて最適なものを選び出します。
仕上げにネジを瞬間接着剤で固定させました。

再修理では耐久性を考えていますので、
ネジが外れるか折れるまでは大丈夫だと思います。



塗装済んだ電池室に、メッキで仕上げた端子を取り付けます。
かなり綺麗になりました。


巻き戻しのスライダー部分も完璧に直りました。
緑青に覆われていたのが嘘ように光輝いています。


MS-4の端子もピカピカになりました。


人工皮革を貼り直して修理完了です。
Sモード、Cモードともに問題なく動作します。

MD-12 & MD-15

左:MD-12
右:MD-15
グリップ形状が異なります。
MD-12はMD-3に似ていますが、MD-15はMD-4に似ています。


左:MD-12
右:MD-15
カメラとの接点も異なります。


左:MD-12
右:MD-15
横から見るとグリップの高さがMD-15の方が低くなっています。
電池室もMD-15は斜めになっており、MD-4似です。



MD-15も含め
当方は一切修理は請け負っておりません。

ジャンク品は健康に良くありません。
良品を買いましょう〜

 

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