MD-2 Motor Drive

 

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Prologue

都内某カメラ店の陳列棚で異彩を放つMD-2+MB-1
なんだ!・・・と絶句してしまいました。


MD-2はMB-1の電池液漏れにより緑青に覆われています。


そしてMD-2とMB-1に間は何故かピンク色に変色しており、
不気味なトロピカルな色が実に泣かせてくれます。

MD-2の操作部分は全て電池の液漏れによる緑青で固着して動きません。
MB-1には電池ケースのMS-1がセットされてはいますが、
電池の液漏れによる固着物によりMB-1とMS-1が一体化しています。

隙間から見える電極の部分は緑青の塊と化していました。
MD-2でなければ間違いなく捨てられていた事でしょう。

ここで出会ったのも何かの縁です。
横にあったMD-12の外観がきれいな不動品と一緒に購入。

果たして修理出来るのか・・・
オブジェになるのか・・・
険しく長い修理の道のりが始まりました。

MS-1
MD-2の修理の前に、まず電源のMB-1を直さなくては!
日曜日は昼から夜中までMB-1三昧でした。

最初に固着したMS-1を外すのに2時間掛かりました。
ステンレスの150mm定規を使って少しずつ固着物を削っていきます。
薄くて粘りのあるのに腰もあるモノでないと作業は出来ません。





ようやく取り出した悲惨な状態のMS-1は、
本体側の電極はバラせるので外し、
腐った電極は細かく切断しながら取り除き、
使えそうな電極は精密ドライバーで緑青を削り落とし、
小さいワイヤーブラシをリューターにつけて磨き上げました。

MS-1蓋側の電極はカシメてあるので、外さずに作業を進めましたが、
電池を10本も使うので端子の修理作業だけでも かなりの時間を費やしました。

MS-1の作業が一通り終わったところで、
電源本体MB-1の修理に取りかかりました。

MB-1



MB-1の蓋には前のオーナーが削り落とした跡があります。
それがかなり荒っぽい仕事です。

という事は不動の原因が修理の失敗による破壊品なのか・・・
気を取り直して電液の漏れによる固着物を削ります。

蓋の方は前オーナーが削っていたので、
固着物を除去する部分は少なくて済みました。

大変だったのがMB-1の電池室の固着物の除去です。
作業がやりにくい上に固着物が広くて厚くなっており、
最初はドライバーで削っていたのですが、
かなり硬くてそのうちに指が痛くなってしまい、
その後はダイヤモンドヤスリで削っていきました。

小さいヤスリでしか作業出来ないので、その作業にかなり時間が掛かりました。
アルミ地が見えたらリューターで研磨し、 どうにか下処理の作業が終わりました。 

腐食による虫食いがMB-1の外部まで及んでおり、
内部はいたる処で虫食いが起きています。
今後は電極の取り付けと虫食いの穴埋めをしなければ なりません。

それでも直ればお宝に変わるとの意気込みで、
プラモデルを作っている時に似た充実感の中で その日の作業は終了です。

意外にも楽しみながら作業を進められました。
翌週の日曜日になり作業を再開します。


問題山積みのMB-1は土曜日のうちにパテ盛りをしておきました。
使ったパテはタミヤパテのベーシックタイプです。
エポキシ造形パテも購入しておきましたが、 ベーシックタイプだけで済みました。

紙ヤスリ#800で荒磨ぎして#1000で研磨しますが、
パテが痩せるので再度パテを盛って乾かして面出し という作業を繰り返します。

だんだん面倒になってきて、外から見えないから まぁ良いか〜
やや中途半端ですが下地は終了。

エアツールも使える2馬力と1.5馬力のエアコンプレッサーがありますが、
風は強いし準備や片付けが「面倒」なので筆塗りで仕上げです。


タミヤのフラットブラックを塗りましたが、
これはその昔にEL2を塗ったものなので在り合わせです。(汗)

塗装の仕上がり具合は、いかにも筆塗りで補修しました〜という感じです。
色合わせしていないので目立つのは仕方ありません。

それでも黒いので緑青色よりは高感度アップ間違いなしです。


MS-1
MS-1の衝撃的な電極部分ですが、 電極は単純に付け替えます。

電池ボックスを購入しておいて、電極バネを切り出して取り付けたのですが、
線径が純正より太くてバネも長くてMS-1を壊しそうな強さです。

仕方なく電気パーツ屋へ行って、 別の電池ボックスを購入してきました。
次の方は線形も丁度よくバネは少し長いですが、
許容範囲内と判断してそのまま使いました。


電池を5本セットして電圧を測ると、かなり低い・・・
思いっきり電圧降下しています。

やっぱり接点にメッキをしないとダメかな〜 と思いつつ接点を綿棒で磨きました。
すると電圧も高くなりました。
でもメッキは面倒だしなぁ。(笑)

MD-2
いよいよMD-2の本体の修理に入りました。
上蓋、底蓋ともに緑青でネジが固着しています。
こういう状態で無理にネジを回すと、 ネジの頭がねじ切れてしまいます。
定石の「注油して一晩待つ」も ネジ山とネジ溝が緑青で埋まっている為に、
効果が期待出来ません。

危険ですがバイクやクルマのエンジンを分解 する時と同じように力業で外します。
ネジを外さなければ先には進めませんし、
失敗しても自分のモノですからクレームもありません。
自業自得と諦めもつきます。

結果は・・・
どうにか全てのネジが外せました。
力業で外したネジ変形しており、 残留応力もかなりあって危険です。
再使用せずに新品のネジに交換します。


蓋を開けると全くの予想外な事ですが、 幸運にもMD-2の中は緑青もなく、
かなり綺麗な状態に保たれています。

ただし外部との接続している部分は、全て緑青で固着しています。
その固着により内部は密封状態となり、保存状態が良かったものと思われます。


弱点のギアは減りもなく、割れも発生していません。
ある意味で極上品の部類に入るかもしれません。

固く固着している各部分を力を込めて動かします。
本当は力なんて加えたくありませんが、力業で無理矢理動かすしかありません。

巻き戻しレバー用のロック解除ボタンは固まり、手では痛いので棒で押し込みます。
それから巻戻しレバーを動かしたら「バキッ」と動きました。

やれやれとレバーを戻すとロック解除ボタンが 「ピョーン」と飛んでいきまいました〜
緑青で固着していたのでボタンの留め輪も腐食し、
動作した際の衝撃で割れて粉々になったようです。

かなり小さいサイズなので規格品かは不明です。
まぁ無くても巻き戻しする時に爪楊枝でも突っ込めば、
代用出来る気もするんですけど・・・ね。

すっかり気分が落ち込んでその日の作業は終了しました。
MD-2の巻き戻しレバー用のロック解除ボタンの止め輪ですが、
破片が見付かり厚みを測ると0.2mmしかありません。

モーターのプラスチックのギアもそうですが、
もう少し耐久性を考えて欲しかったです。 
まぁ通常は腐食する事もないでしょうけど・・・ねぇ。

軸径が2mmなので止め輪の部分のくびれは1mm位のようです。
あまりに幅が狭くて手持ちのノギスでは計れません。
1mmの軸用で厚み0.2mmの止め輪は規格外でした!

手持ちの在庫品にも該当するものは当然ありません。
止め輪のメーカーに在庫を確認しました。
ある訳がありません。

特注で作る場合は単価 3円、最低ロット10,000個!!
単価は安いけど、1個欲しいのに3万円ですから断念です。

MB-1
MB-1の仕上げとして筆の跡が残る塗装の磨きに入ります。
#800のペーパーに水を付けて研磨したところ、変に削れて凸凹になるは、
エッジは地が出るは・・・ 大失敗です。 またやり直しです。

手間でもエアブラシで吹いておけば良かったと思っても後の祭りでした。
結局また筆で塗って仕上げましたが、最初の方が綺麗だったかも。

再塗装[追記]

手抜きで皮をマスキングして塗装をやり直しました。
電池室も一緒に吹いておきます。
筆ではなく半ツヤのスプレーで塗装です。


コネクターや三脚ネジもきっちりマスキングしておきます。


底面も塗装しておきます。
という事で全面塗装しちゃいました。


一晩乾燥させてからマスキングを剥がします。
筆のようなムラはありませんが、吹きムラによる凹凸があります。


前面にあった錆は気にならない程度まで修復出来ました。
半ツヤのブラックですが、オリジナルよりはツヤがあります。


吹きムラによる凹凸はフライスで四面平面出しをしたアルミに、
耐水ペーパーを両面テープで貼り付けて研磨します。
水磨ぎを#400→#1000で行い、仕上げ用コンパウンドで磨きます。
すると艶々になります。(ダメじゃん・・・)
#1000の水磨ぎ後のコンパウンドによる磨きを適当に済ませ、
やや磨き傷あり=半ツヤという事でOKにしました。

MS-1
MS-1に手を入れます。
バッテリーチェックボタンを押すと、点灯しなかったり、
1つだったり、2つだったりと安定しません。

端子の酸化防止をしなくちゃいけないと観念して、
端子にクロムメッキをすることにしました。

本来なら緑青を酸洗しなくてはいけないのですが、
どうしても不精なものでヤスリで削って、アルコールで脱脂して済ませました。

そういう下地なので綺麗なメッキの色は出ませんが、
導通重視ですから問題なしです!

電池蓋へのコンタクトピン付きの電極を外したところ、
バネの力で曲がってしまいました。

それを直したら「折れ」てしまいました。(涙)
MB-1との接続端子が開いていたので、
ペンチで修正してコンタクトを確実にするようにしました。

がしかし、ポロっと端子が「割れ」てしまいました。(号泣)
 「あ゛ーーーーーーーー」と叫んだので、
 娘達がどうしたんだと集まってきました。

私は転がっている端子を見て呆然・・・
 「やっちゃったーーーーーーーぁぁぁぁ」
 テンション急降下です。

元々クラックが入っていたのが原因のようです。
やってしまったものは仕方ないので、気を取り直して銅の下地が出ている端子を
クロムメッキしました。

10年前のメッキ液ですが、メッキ出来たのはラッキーかも。
外せる端子は良いのですが、蓋側の端子は外せないので
そのままメッキするのであまりきれいに出来ませんでした。

メッキが意外にも短時間で済んだので、「折れ」「割れ」の修理に入ります。
割れた端子はステンレスの1mm厚で、 折れた方は銅にメッキしてある薄物です。

ステンレスの方はろう付けすれは良さそうですが、
あいにくバーナーは、かなり昔に壊れて処分してありません。

近くホームセンターに電話し、ステンレスハンダの在庫を確認し買いに行きました。
家に戻り半田付けしようと説明書を読んだら、
「必ず専用のステンレス用フラックスを使用して下さい。」 と書いてあります!

ステンレス用だからフラックス入りだと思ったのに・・・
仕方がないので、またホームセンターへ買いに行きます。
そそくさフラックスを買って帰宅しました。

端子を小型の万力で固定して、ステンレス半田を何もせずに付けみますが
やはりはじかれてしまいます。

酸化膜があるので当たり前ですけど・・・
一応やってみないと気が済みません。

次にフラックスを付け、半田付けする面白いように付きます。
酸化膜を除去するだけ、こんなにも付くとは!
ちょっと感激しました。

半田は多めに盛っておいたので、次にリューターで削ります。
強度が必要なので余分な部分のみ削りとります。
削っても手では動かない程度の強度がありました。


同様にプラケース側の端子がはまる部分も半田の盛り部分の逃げを
作るために削って加工します。


ついでに折れた薄板の端子もステンレス半田でつなげました。
こちらは板状なので平ヤスリで削って整形しました。

ここまででようやくMS-1の準備が整いました。
生乾きのMB-1に取り付けてバッテリーチェックをすると、
ランプが2つ点灯します。 何回やっても安定しています。 
やった〜 という事で電源の不安定な部分は解消です。

巻き戻しロックのボタンの固定リングですが、
金属板に両面テープで貼り付けて、紙ヤスリで削りました。
これがかなり難儀しました。
ちょっと力を入れるとすぐに外れてしまうのです。
何度も両面テープを貼り替えて、本当に「地道に」作業しました。
現物合わせで20分ほど研磨して2.6mmまで研磨したところで、
ギリギリ入るようになりました。
ガタがない方が良いかも(本当は疲れた)という事で、研磨は終了です。

ところが今度はそのリングの取付が大変です。
ピンセットでないと入らない隙間から入れて、
どうやって軸に挿入するか・・・
ピンセットで挟んだまま押して入る訳がありません。

たまたまギリギリに作っておいたのが良い方に働き、
溝に入った状態でピンセットを離してもリングは動きません!
すかさず棒で押し込むと「カチッ」とはまりました〜

MD-2の方はCRC556を吹いておいたので、
巻き戻しロック解除連動ピンを「えーぃ」と動かします。
すると「バン」と音がしてピンが出ましたが、
同時にフィルムカウンターがSになりました。

シャッタースピードのダイヤルも何回も動かし、
回転がスムーズになるまで繰り返します。

ここまで動くようになると我慢も限界です。
F2Aを持ってきて取り付けます。

シャッター速度を1/60にして、ダイヤルはSにしてからシャッターボタンを押しました。
「カーン」と乾いたF2Aの音の後に、MD-2の音が響きました。

MD-2復活です。

何度かSで試した後に、いよいよCで連写します。
リズミカルに「カーン」「ウィーン」と繰り返します。
もう満面の笑みです。

しかし、フィルムカウンターが動きません。
調べてみると、フィルムの枚数を最初に設定するようです。
ところがセット出来ません・・・

何度ダイヤルを回してもSになってしまいます。
また、MD-2を分解して機構を確認します。

フィルムカウンターの外周がギアになっており、1枚撮ると1つ歯車が動くようです。
ラッチが噛まないのが原因のようなので、それらしい部品を動かしますが「渋い」
あきらめずに何度も動かしているうちにスムーズに動き、
無事フィルムの枚数の設定が出来るようになりました。

再び組み直して、F2Aに取り付けて確認しました。
フィルムカウンターが0になると停止します。

そして巻き戻しロック解除連動ピンを動かすとSになります。
最後に巻き戻しです。 
「やさしく」巻き戻しレバーのロックボタンを押し、 レバーを倒すと・・・動きません。

レバーを戻して、もう一回やってみると
「ジーーーー」と巻き戻しが出来るようになりました。


これでどうにか緑青色にピンクの超絶MD-2&MB-1の修理が完了しました。

ここまで掛かった時間は
12時間×3日間+α ですので40時間は軽く超えていると思います。
時給1000円でも、40,000円!

40,000円ですと美品のMD-2が買えてしまいますね。(笑)

修理屋さんの仕事として考えても割に合わず大赤字です・・・
修理して売って儲けるには、中古価格が高額な商品だけに限定されます。
そう考えると、安い修理品は手抜き修理の可能性があるかもしれません。。

ジャンクは楽しいけど、損得考えると成立しませんね。

MD-2,MB-1,MS-1等の修理は請け負いません。

ジャンク品は健康に良くありません。
買い過ぎに注意しましょう〜

 

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