[2009.11.29]

revised [2009.12.6]

TAMRON SP 28-75mm F2.8
XR Di LD Aspherical [IF] MACRO (Model A09)

 

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  レンズ修理
 
Repair of Plastic Lens Body

Specifications

 
TAMRON SP AF 28-75mm F2.8
モデル名:A09
焦点距離:28-75mm
画角:75°-32°
明るさ:F/2.8
レンズ構成:14群16枚
絞り羽根枚数:7枚
最短撮影距離:0.33m(ズーム全域)
最大撮影倍率:1:3.9(f=75mm、最短撮影距離)
全長:92mm (最大伸長[75mm]時:125mm)
最大径:φ73mm
フィルター径:φ67mm
質量:510g 526g(フード込)
価格 :\55,000円


Prologue
HP用の素材として格好のレンズを入手しました。
良品ではネタになりませんので、当然ながら難あり品です。

状態はフードバヨネット部分の欠損という結構な重傷患者です。
割れ方から推測するとフード下端をカメラ方向に押すようにぶつけたようです。

この部分は独立したパーツなので簡単に部品交換出来るのですが、
残念ながら他メーカー同様にタムロンもパーツ売りには対応していません。


かなりの衝撃を受けたようで鏡胴先端のフィルター取り付け部分までクラックが
走っています。


まずは前玉の飾りリングを外しますが、切り欠きが一カ所しかありません。
細いマイナスドライバで回そうとしたら外れてきました。
ネジではなくはめ込み式になっていたのです。


欠損したパーツは鏡胴の先端で赤丸部分のネジ3カ所で固定されています。
青丸のネジは前群を固定しているネジです。


外した欠損パーツを観察するとフランジやネジ穴にはダメージはありません。


バヨネットは二つ爪ですので、欠損していない方から型取りします。
使用したのは「型取くん」です。


型を欠損部分に合わせて「プラリペア」で欠損部分を再現していきます。


「プラリペア」を型にトロトロにしてエッジがでるように充填し、
削出し成形が出来るように少し盛っておきます。


硬化したら型取くんを外します。
柔軟性があり変形させられるので、離型材なしで簡単に分離できます。


型からはみ出たバリを精密ニッパーで取り除き、ヤスリで削って整えます。


ヤスリでは削れないコーナーエッジはリューターで削り出します。
使用したのは超硬ビットとダイソーの細径のダイヤモンドビットです。


型の固定が甘かったようで、バヨネット部分まで充填されいしまいました。
リューターと精密ヤスリで溝を削り出します。


フランジのネジ穴も埋まってしまったので穴あけします。


再生後の欠損部分です。フランジの上がカメラ側となります。


組込しようとしたところ、前群固定フランジのうちの1カ所が破損している事が判明。
このままでは前群が正規位置からズレていますので修理します。


前群を外して破損部分を接着します。
ついでに中群のホコリをブローして清掃しておきます。


修理後は正規の位置にレンズが戻りました。


再生したパーツを元通りに取り付けていきます。


完成した欠損部分です。


フードバヨネットの溝が白いのが気になりますが、
フードをすればわかりませんので研ぎ出しはしません。


完成したA09です。                                                        

Lens TEST

赤枠部分を原画から切り出しています。



画角:28mm

f:2.8
28mmの開放では左端で画像に流れが発生しており、右端の流れは
左に比べると明らかに小さいものです。
特筆すべきは周辺画質の甘さに比べて中央の画質がしっかりしている事です。


f:5.6
絞る事で左端の流れは大きく改善してまともな
レベルになります。


f:11
周辺の甘さがほとんどなくなります。

画角:50mm

f:2.8
28mmでは左にあった甘さが今度は右端に発生しています。
左端は気になりません。
このあまりにも大きなバラツキというか不安定さがこのレンズ欠点です。
28mmに比べて中央の画質にも甘さが目立ちます。


f:5.6
絞る事で右端の甘さは少し改善していますが、まだまだという感じです。



f:11
ここまで絞れば右端の甘さはほとんどなくなります。

画角:75mm

f:2.8
開放では75mmが最もまともな画質となっています。
左端に甘さと右端に多少の流れがありますけど。


f:5.6
全体的にまとまった感じの画質になります。


f:11
絞っても大きな変化がなくも、右端の甘さが改善される程度です。


左から28mm、50mm、75mm
28mmはかなりのタル型の歪曲があります。
50mm、75mmでは弱いながら糸巻き型歪曲がありますが、
この程度なら私は全然気になりません。

Lens TEST 2
このレンズは全域で33cmまで寄ることが出来ます。
75mmで33cmまで寄ってマクロ撮影をしてみました。

Nikon D200 75mm 1/1500 f:2.8


Nikon D200 75mm 1/400 f:5.6


Nikon D200 75mm 1/100 f:11


Nikon D200 75mm 1/50 f:16

明るいレンズですのでピント山もつかみやすかったです。
ピントはマニュアルで合わせています。

F's Impression
大口径ズームと呼ばれる開放F値が2.8のタイプは大きくて重いのが普通です。
三脚と同じですがレンズも大きて重いと連れ出す時に気も重くなります。

その点でA09は普通の標準ズームレンズ並の大きさと重さなのです。
XRレンズを前玉に使う事で鏡胴を短くし明るさを確保しているのです。

Tokina AT-X PRO AF 28-70mm 1:2.8を所有していますが、
特有のソフトフォーカスや室内撮影、ボケを活かしたい時にだけ連れ出します。

右:Tokina AT-X PRO AF 28-70mm 1:2.8
左:TAMRON SP AF 28-75mm 1:2.8

Tokina AT-X PRO AF 28-70mmの重量はフード込みで800gですので、
A09の重さは約-40%と劇的な軽さです。

軽い分プラスチック製のボディの質感のなさや、分解した時に分かった簡易な
レンズ固定方法等は軽さとコスト削減を優先させた結果です。
その影響で個体差=低精度と低剛性ボディがこのレンズの欠点です。

30年前のレンズはタムロンのレンズは金属鏡胴で作りも良いモノでした。
http://sfx.g1.xrea.com/tamron85_210mm.htm

今の主流はどこメーカーでもプラ製ボディとなりました。
それによりコストダウンと軽さという恩恵をユーザーは教授しています。
(私が精度を感じるのは金属製のMFレンズです。)

A09はSP(Super Performance)モデルらしいハイスペック、
しかもバーゲンプライスはとても魅力的です。

でもやっぱり性能は価格相応としか言えません。
多少の?欠点には目をつぶりましょう。

ポテンシャルの高い光学系を活かせるボディに組み込まれていれば・・・
高性能ボディ化した「Real SP」モデルがあれば・・・と思います。


当方は一切修理は請け負っておりません。

ジャンク品は健康に良くありません。
良品を買いましょう〜



 

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