ズームレンズ
SIGMA
ZOOM-MASTER 35-70mm 1:2.8-4
Normal
Zoom Lens
レンズ構成 9群9枚
フィルター径 52mm
大きさ(径×全長) 64.5mm×50mm
最短撮影距離:0.5m
重量 320g
発売年 : 1982
発売当時の価格 :\25,000円
Prologue
中古カメラ屋さんのジャンクコーナーにて発掘したレンズです。
1970〜80年代に標準ズーム的存在であった35-70mmのSigma版ですが、
ZOOM-MASTERという仰々しいネーミングが期待させてくれます!?
フィルター径52mmとコンパクトな鏡胴でありながら、
35mm側では開放値2.8と明るいズームです。
同サイズのズームレンズでは広角側の開放F値3.5が大勢ですので、
開放F値2.8になっているのが特徴です。
※追記
1982/8「アサヒカメラ」性能テストでは、MTFを見ると広角側で明るさを欲張っているので
コントラストはやや低く、望遠側では非点隔差が大きい結果となっています。
開放F値2.8スペックに大きな疑問はありますが・・・
Nikon用ながら\300という価格につられ入手しました。
ジャンク品なので小カビ、薄クモリ有りですが、
実写には影響のない軽症レベルです。
直進ズームなので望遠時は長くなります・・・いやなりません。
長くしたした方が広角です、これは使い勝手が悪そうです。
Repair
画像では分かりにくいのですが、最後部のレンズに薄いクモリが出ています。
マウントの3本のネジを外すと、マウントから絞り環まで丸ごと外れてきます。
これは良く考えられた構造です。
レンズメーカーはカメラメーカー各社のマウントに対応する必要がありますので、
各メーカーごとに違うフランジバックや絞り連動機構に合わせたユニットを
一体で取り付け出来る効率的な方法なのです。
最後部のレンズを取り外します。
薄いクモリは分かり難いですね。
内側にクモリがありますので、クリーニングを施します。
引き続き中群のレンズに発生しているカビに取りかかります。
銘板を外して前玉を取り外すつもりでしたが、銘板がビクともしません。
距離環のゴムリングを外すとテープが・・・
この時代のレンズメーカー品にみられるテープによる結合固定です。
一見したところアルミテープのように見えますが、
実は薄いフィルムにアルミ蒸着したテープでした。
テープを外すとガイド溝と樹脂カラーが現れてきました。
ガイドは無限遠のストッパーを兼ねています。
ガイドを外すと前群が外れてきます。
前群の内側にある小カビです。
何だかクモリもあるようにも見えますが・・・
クリアになるまでクリーニングします。
クリーニング作業完了後のレンズです。
レンズが綺麗になっているのですが、画像では分かりませんね。
マルチコートなのは分かりますけど。
Rerepair
テスト撮影を行ったところ開放は良いのですが、
絞っていくと露出がオーバーになります。
絞り羽に油はにじんでいなかったので、
絞り機構に粘りが出ているようです。
絞り機構と鏡胴間に油が出て粘っていました。
アルコールで脱脂クリーニングを施し粘りは解消しました。
Lens
Test
Wide[35mm]
レンズテストは庭でちょうど咲いていた小手毬を撮りました。
三脚とレリーズを使用していますが、風がありましたので絞ってシャッター速度が
遅い時は小手毬が揺れてブレが出ていす。
Nikon D200+SIGMA 35-70mm 35mm 1/640 F:2.8
中央部拡大[ピクセル等倍]
Nikon D200+SIGMA 35-70mm 35mm 1/640 F:2.8
Nikon D200+SIGMA 35-70mm 35mm
1/250 F:5.6
Nikon D200+SIGMA 35-70mm 35mm
1/40 F:11
Nikon D200+SIGMA 35-70mm 35mm
1/15 F:22
Tele[70mm]
Nikon D200+SIGMA 35-70mm 70mm 1/500 F:2.8
中央部拡大[ピクセル等倍]
Nikon D200+SIGMA 35-70mm 70mm 1/500 F:2.8
Nikon D200+SIGMA 35-70mm 70mm 1/250 F:5.6
Nikon D200+SIGMA 35-70mm 70mm 1/45 F:11
Nikon D200+SIGMA 35-70mm 70mm 1/10 F:22
F's
Impression
テスト撮影の結果、\300のレンズとしては抜群の描写でした。
当たり前ですねぇ。
徹底的にコストダウンしたCanonのプラ鏡胴のNFD
35-70mmに比べれば、
より多くコストが掛かっている分しっかりしています。
Nikon D200+SIGMA 35-70mm 35mm 1/250 F:2.8
広角35mmの開放は優しい感じの雰囲気で、ピンがきている部分はシャープです。
F5.6に絞るとボケも変化し、F22になると全体的にかなりシャープになり、
被写界深度をコントロールすることで思い通りのボケが得られます。
開放からシャープに写るのが当たり前のデジタル用レンズと違い、
絞りに応じて別のレンズのように画質が変化する性質は楽しいものです。
ZOOM-MASTERというネーミングは、あながち誇大表示ではありません。
ネットで検索したところ、このレンズはOEMで他社にも出ていたようなので、
クセのない素直な性格のレンズなのでしょう。
このレンズは良品でも安価で、たとえハズレても悔しくはないはずです。
DSLRなら暗いレンズでも明るいファインダー像が得られますので、
プレビューするだけでも面白い程の画質の変化が楽しめます。
SIGMA
AF ZOOM MASTER 35-70mm 1:3.5-4.5
レンズ構成 9群9枚
フィルター径 52mm
大きさ(径×全長) 69.5mm×50.5mm
最短撮影距離:0.5m
重量 325g
発売当時の価格 :\28,000円 (フード\2,000円)
発売年 : 1988-1992
2009年の夏、MFを購入した同じジャンクコーナーから回収しました。
初期AFレンズのため、金属部分も多く質感が高いです。
中群にカビありで\200-でした。
Rerepair
糸状のカビが発生しています。
レンズ径が小さいだけに影響は無視出来ません。
最後部のレンズはマウントに固定されていますので、
最初にマウントを外します。
いよいよ本体のレンズの分解です。
吸盤オープナでリングナットを外す中群後部のレンズが外れます。
レンズサッカーで次のレンズを取り出します。
前にあるカラーも外します。
さらに奥のレンズを取り出します。
取り出したレンズ3枚です。
全てクリーニングします。
さらに中群の最前部のレンズは本体に付けたままクリーニングします。
ライトを当てて強光状態にするとカビ痕が分かりますが、
順光では問題にならない程度までは綺麗になりました。
左:MF 右:AF
35-70mmですがワンタッチズームからAF化に伴いツータッチズームとなり、
マクロ表記は無くなりましたが、最短撮影距離は50cmと同じで、
ノンストップマクロ機構と称していました。
ネーミングのZOOMとMASTERの間からハイフンが消えています。
フィルター径は同じ52mmですがF値が暗くなり、35mm側では開放3.5で
70mm側は4.5と特長のないスペックとなりました。
当時の標準ズーム35-70mmでは、F値が3.5-4.5となっているモデルは
F3.5通しの明るいタイプに比べ設計に無理がありませんので、
広角から望遠の全域で性能が安定しています。
Minolta AF 35-70mmの6群6枚に比べても9群9枚構成ですので、
手抜きは感じられません。
ただし、α-7000同様に革新的なMinolta AF 35-70mmは、
貼り合わせ式の非球面レンズを世界で初めて採用していますので、
レンズ枚数が少なくても性能は良いのです。
この時点では新旧技術の差がレンズの枚数の差と言えそうです。
動作時に経年変化だけとは思えないギアの大きなバックラッシュがあり、
AF動作をさせる度に大きな作動音がします。
{分解して確認しましたが、ギアに異常摩耗はありませんでした。]
初期のAFなので距離環は先端にありAF駆動時に回転するために、
AFのパイオニアであるMinolta同様に僅か3mmという狭さなのです。
Lens
Test
Wide[35mm]
Nikon D200+SIGMA 35-70mm 35mm 1/160 F:2.8
中央部拡大[ピクセル等倍]
Nikon D200+SIGMA 35-70mm 35mm 1/160 F:2.8
Normal[50mm]
Nikon D200+SIGMA 35-70mm 50mm 1/200 F:4
中央部拡大[ピクセル等倍]
Nikon D200+SIGMA 35-70mm 50mm 1/200 F:4
Tele[70mm]
Nikon D200+SIGMA 35-70mm 70mm 1/160 F:4.5
中央部拡大[ピクセル等倍]
Nikon D200+SIGMA 35-70mm 70mm 1/160 F:4.5
Lens
Test
35mm f:3.5
歪曲収差が大きく、周辺で描写がやや甘く、周辺光量落ちも大きめです。
35mm f:8
解像度は全体的に上がり、周辺部も解像度に問題はありません、
35mm f:11
f8とほとんど変わりません。
50mm f:4
歪曲収差は気になりません。でも全体的に甘い描写です。
50mm f:8
全体に解像力が上がります。
50mm f:11
70mm f:4.5
周辺部がかなり甘いです。
70mm f:8
周辺部がまだ少し甘いです。
70mm f:11
全体にしっかりした描写になります。
Distortion
35mm
50mm
70mm
35mm 樽型の歪曲が出ています。
50mm 樽型の歪曲は、ほとんど気にならないレベルになります。
70mm 歪曲は問題ないレベルになります。
F's
Impression
\200レンズは実写してみると開放でのボケも良い感じでした。
レンズテストの結果から、35mmでは歪曲収差が大きいのはこの価格帯なら
一般的なレベルだったと思います。
解像力やコマ収差も気にならないレベルにまとめられており、
Nikkor 50mmと同等の大きさで35-70mmズームですので、
標準ズームとしても使い勝手が良かったものだと思います。
左:Nikon F-501 + SIGMA ZOOM MASTER 35-70mm AF
右:Nikon F-301 + SIGMA ZOOM MASTER 35-70mm MF
年代的に近いNikonのカメラに装着してもみました。
結構似合っています。
当方は一切修理は請け負っておりません。
ジャンク品は健康に良くありません。
良品を買いましょう〜
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