レンズの分解清掃
Zoom
Lens
レンズ構成 8群9枚
画角 34-63度
最小絞り 22
最短撮影距離目盛り 0.5m
フィルター径 52mm
大きさ(全長×最大径) 60.9×63mm
重量 200g
発売当時の価格 :\31,900円
1983年発売の3代目の35-70mm、3群ズーム。
Prologue
キヤノンFDレンズを分解するのは初めてです。
3群ズームというのが興味をそそります。
広角端の35mmと望遠端の70mmの画質は良く、
中間の50mmはそれほど良くないというのが、
発売当時のレンズテストの評価です。
このレンズは結構なカビあり品です。
ファインダーを覗いても気になりませんが、
入手目的は分解なのですからバラしていきます。
[1]
前玉の分解は銘板を外す事から始めます。
回しても外れません。
3ヶ所の爪で留まっていますので、
マイナスドライバーでこじって外します。
[2]
銘板を外すと前玉を固定しているプレートを外します。
3ヶ所のネジを外し、プレートを左回転させてるとプレートの爪を外せます。
レンズ内部にカビがありますので分解していきます。
[3]
右から、前玉固定プレート、前玉、スペーサー、2番目のレンズです。
プレートだけで固定されているので、レンズはポロッと外れてきます。
[4]
中群を取り外します。
鏡胴のヘリコイドから回転させて外します。
[5]
中群の後ろ側カビです。
ここが一番凄い状態になっていました。
[6]
この状態で絞り直前のレンズの清掃が可能です。
ここもカビがありますので清掃します。
[7]
全てのレンズをクリーニングして分解と逆の手順で組立ます。
組立工程での簡略化を考えて設計されていますので、
プラモデル並に簡単に組立が可能です。
最後に無限遠の調整をします。
インフチェッカーを持っていませんので、
カメラに取付け100m以上遠くの直線的な目標物で調整します。
無限遠の位置が出たところで、
プレートの3ヶ所のネジで固定します。
[8]
後玉の分解は最初にマウントを外します。
[9]
鏡胴の3ヶ所のネジを外すとマウントが外れます。
[10]
マウントを外すと絞り連動レバーが外れます。
ただ嵌っているだけですので、レンズ脱着ボタンを押しながら
引っ張れば外れてきます。
一体化している最後部のレンズが一緒に外れてきます。
[11]
絞り連動レバーを取り外すと後群が現れます。
[12]
後群レンズはスナップ式のカバーで固定されています。
あまりにも凄い固定方法に絶句・・・
[13]
ただ嵌っているだけのレンズが外れます。
[14]
唯一カニ目で外すレンズが現れてきます。
[15]
レンズを外す絞りが現れます。
絞りを開いてその前のレンズクリーニングします。
これで全てのレンズのクリーニングが完了しました、
分解修理でヘリコイドは問題がありませんので、
今回はグリースアップはしていません。
F's
Comment
当時としは破格の価格は31,900円と今では決して安くは感じませんが、
それまで高額だったレンズを安くするノウハウが分解により分りました。
分解していて楽しいレンズとそうでないレンズ、
その違いは構造や仕上げの差にあるわけですが、
このレンズは後者の楽しくない方でした。
FD Zoom 35-70mm 1:2.8-3.5 は、\.110,000-
FD Zoom 35-70mm 1:4 は、\.45,000-
このレンズのコストパフォーマンスの高さが分かります。
これだけコストダウンしていれば利益も大きいでしょうが、
ユーザーも安い価格に喜んだ事でしょう。
今や日本トップレベルの高収益を誇るキヤノン、
その原点と理由がこのレンズの中に見えてきました。
徹底的なコストダウンを計ったAE-1やプラ製FDレンズが、
それからのキヤノンの方向性を決定しました。
それは、「安かろう悪かろう」ではありません。
吉野屋の「早い安い旨い」じゃありませんが、
写りに関わる光学系のレンズやコーティングは、
一流メーカーらしく手抜きがありません。
良いモノを安く作り、イメージ戦略で売り上げを伸ばす、
それがニコンと対極にあるキヤノンなのだと思います。
当方は一切修理は請け負っておりません。
ジャンク品は健康に良くありません。
良品を買いましょう〜
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