Prologue
ピンホールレンズで撮った写真・・・
連想するのはソフトフォーカスな画です。
針穴の大きさの光の束が積み重なって画を作るために、
どうしてもソフトフォーカス調になってしまう・・・
これまで針穴写真にはまったく興味を抱かなかったのですが、
これを書いている2007年8月から10年以上前の「カメラこだわり読本」に
田所美恵子さんが寄稿されたの「針穴写真の魅力」を読んでから、
針穴写真に興味が出てきました。
田所さんの作品は、ピンホール写真らしからぬ臨場感と
ピンホールならでは雰囲気を兼ね備えていました。
今まで読み飛ばしていた寄稿文に目に留まったのは、
猛暑が続く夏の夜に寝室で暖まっている布団に寝そべりながら、
強めにクーラーを効かせ寝心地が良くなるまで冷えるのを待つ。
そんなひとときに古い雑誌を取り出しては読んでいる時でした。
寄稿文には1989年の仏蘭西での針穴写真との出会いから、
印画紙を使ったカメラの作り方と撮り方まで書かれていました。
印画紙を使えば現像が必要になってきますが、
停止液の臭いがこびり付いた湿った暗室のイメージがあり、
自宅に暗室を作って現像する気にはなれません。
フィルムかデジタルでピンホール写真を撮ろうと思います。
お手軽な市販カメラを探したところ、「大人の科学マガジン」vol.14の付録に、
「ステレオピンホールカメラ」とありました。
書店に探しに行くと在庫が無く、取り寄せてもらい入手しました。
このカメラの3つの特徴があります。
1.フィルム2コマを使った本当のパノラマ撮影
2.ステレオ撮影
3.1コマの通常撮影
と侮れないカメラとなっています。
組立は後のお楽しみです。
「ステレオピンホールカメラ」を取り寄せている間に工作をしました。
ピンホールレンズはボディキャップで作るというのが王道ですので、
D-SLR用にD-SLR専用のピンホールレンズを作る事にします。
所有しているNikonのD-SLRは、DXサイズの撮像素子で小さいものです。
(2007/8/24フルサイズのFXサイズの撮影素子を搭載したD3が発表されました。)
DXサイズではフルサイズに比べて1.5倍の望遠になってしまいます。
NikonのD200では、ミラーアップ持続時間は30sec.のみです。
ミラーアップがメカ的に出来ないので、超広角は不可能である事が分かりました。
NikonのD-SLRでの最も広角となるのは、ミラーに当たる直前という事になります。
D-SLRのミラーは銀塩に比べ一回り小さいのが多少の救いになるかもしれません。
Body Cap
BF-1A
手持ちのBF-1Aを見てみると、内側表記がいろいろ違います。
ロットが違うのはもちろんですが、金型も違うようです。
ピンホールレンズに使うボディキャップを、所有している中から選びます。
そのボディキャップを採寸して図面にします。
Mirror
マウントからミラーまでの距離を測ります。
もちろんミラーアップした位置の距離です。
フランジバックからマウントからミラーまでの距離を引いたものが、
最短焦点距離になります。
私のカメラでは、36.5mmとなりました。
この距離はミラーの大きさや機構で変わりますので、
カメラごとに違いますのでご注意下さい。
SPECIFICATIONS
ピンホールレンズの図面を作る前に仕様を決めます。
形式
BF-1A改
ピンホール
0.2mm, 0.3mm, 0.4mm, 0.5mm
ピンホール板
プレートとネジによる交換式
焦点距離
広角、標準、望遠
焦点距離変更
アダプタ組換式
F's
Pinhole Lens Design
広角 [38.2mm] 58mm相当(DX)
水色の部分 焦点距離を変えるアダプタです。
赤い部分 ピンホール板
青い部分 ピンホール固定板
緑の線 ミラー
ピンクの線 DXサイズの対角線の画角
広角の状態ですが、DXの画角では標準です・・・
ミラーアップが長時間出来ないとDXの広角は出来ませんから。
標準[49.2mm] 74mm相当(DX)
焦点距離を変えるアダプタをフードとして前面に取り付け、
赤い部分のピンホール板を青い部分のピンホール固定板で取り付けます。
望遠[61.6mm] 94mm相当(DX)
水色の部分の焦点距離を変えるアダプタをBF-1Aの前に反対向きに取り付けます。
赤い部分のピンホール板と青い部分のピンホール固定板はそのままです。
F's
Pinhole Lens Parts
焦点距離を変えるアダプタは黒ベークにします。
樹脂なので加工が容易な上にボディカラーも黒ですし、
手持ちの端材にあったからです。
部材を購入するなら黒のNCナイロンという手もあります。
センター部分はφ2mmの穴からテーパー状に広げて加工しています。
加工後にマットブラックで塗装してあります。
ピンホール板は端材の80ミクロンのアルミ箔を使用し、
0.2mmから0.5mmまで0.1mmごとに製作します。
大きさと穴形状はスケールルーペにて確認しながら作ります。
ピンホール固定板は0.3mm厚のブリキ板のマットブラック塗装品。
焦点距離を変えるアダプタへのピンホール板の固定は
2箇所のM1.7ネジにて行います。
BF-1Aの加工はセンターに20mmの穴をあけて、
焦点距離変更アダプタへの固定の皿ネジ用の穴もあけます。
BF-1Aの内側はこんな感じになります。
BF-1Aへは4箇所のM2ネジで固定します。
全てを組んだ状態です。
D-SLRにピンホールレンズ(キャップ)を取り付けた状態です。
F's
Pinhole Photograph
針穴写真といえば静物や風景が似合いそうです。
カメラバックを担いでWARP
DS1に乗り撮影に出ました。
風景を撮ろうと向かった先には駐車車両があり断念し、
近くのお寺に行って山門の仁王像を撮ってきました。
広角 [38.2mm] 20sec.[ISO:400]
ソフトフォーカスな画ですが、DXサイズと同じ大きさにすれば気になりません。
広角 [38.2mm]
20sec.[ISO:400]
上の画をセピア調モノクロに変換しました。
印画紙を使う針穴写真はモノクロがメインですが、
デジタルでもモノクロの画の雰囲気が好きです。
広角 [38.2mm]
20sec.[ISO:400]
お寺を後にして、再びWARP DS1で走り出します。
次の目的地は景色が撮れる場所です。
広角 [38.2mm] 4sec.[ISO:400]
直線の線路が見渡せる跨線橋からの写真です。
金網にカメラとレンズを接触させての撮影となります。
写り込んだ金網から背景までピントが合うのが新鮮な感じです。
広角 [38.2mm] 4sec.[ISO:400]
4秒シャッターでは電車の姿を捉える事は出来ません。
でも通過した事は分かると思います。
広角 [38.2mm] 1/2sec.[ISO:1600]
続いて高感度設定にしてシャッタースピードを稼いで撮ります。
大きく引き伸ばす訳ではないので、この画像程度のサイズなら
感度による差に気が付く事はないでしょう。
広角 [38.2mm] 1/2sec.[ISO:1600]
電車を撮ってみました。
今度はちゃんと姿を捉えていますね。
状況に応じて高感度設定が手軽にその場で出来るのも、
デジタルカメラならではの技です。
高感度設定により粗くなった画には粒子感も出てきて、
フィルム調の感じの良い画が撮れました。
F's
Pinhole Photograph part 2
広角 [38.2mm] 120sec.[ISO:1600]
Glico HONDA RA272をアップで撮ってみました。
ちょっとソフトな感じなので。
ピンホールの錯乱円がソフト感の原因となりますので、
アンシャープマスクの半径を錯乱円に合わせれば良いのでは!。
上の画像をアンシャープマスクをかけ、色も補正もしてみました。
Glicoのおもちゃをこんな感じに撮って仕上げられるのもデジタルの
針穴写真なら簡単に出来てしまいます。
F's
Comment
印画紙をフィルムの代わりとして直接カメラに入れて撮影した写真や、
中判や大判のフォーマットからコンタクトプリントした写真を見ると、
予想以上にシャープな印象を受けます。
しかし拡大プリントした35mmサイズやDXフォーマットの写真を見比べると、
かなりは見劣りしてしまいます。
ピンホール写真というよりピンボケ写真です。
それでも大きく拡大しなければ、針穴写真なりの雰囲気が伝わってきます。
針穴写真の特徴である、歪みのない画像を狙って撮ってきたのですが、
遠景は霞んだようになってしまい、架線や電線もハッキリしませんでした。
私の好みからすると針穴写真には仁王像のような写真や、
近景を主題とした風景が合いそうな気がしました。
これから三脚を持って撮影にいく時には、
小さく邪魔にならないピンホールレンズを
一緒に持っていこうと思います。
当方は一切修理は請け負っておりません。
ジャンク品は健康に良くありません。 良品を買いましょう〜
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