[2007.7.8]

MD-11,12,15 Motor Drive 

 

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Jumming

分解修理したMD-12MD-15の巻き上げ機構は、
ギアトレーン系から上の巻上げ部分の構造は、
ほぼ同じになっています。

修理の過程で巻上げがロックする症状が出る事がありました。
MD-12、MD-15の巻き上げはモーターの回転を、
ギアトレーンでカメラまで連動させています。

手で回して巻上げの仕組みを見ていると、
その精巧なギアの動きに感心させられます。

しかし精巧な作りが機械的なメカニズムにおいては、
必ずしも信頼性が高い事につながりません。

今回のタイトル「jamming」で有名な話ですが、
ベトナム戦争時代の米国製のM16とロシア製のAK47の
設計思想における差があります。

詳しい話は他に譲るとして、
高精度のM16は、野戦において「jamming」が多発しましたが、
対して低精度AK47は高い信頼性を持っていた。

信頼性を高めるために、
クリアランス少なくして精度を上げたM16
クリアランスを大きくして遊びを持たせたAK47

野戦ではクリアランスの少ないM16は使い物になりません。
実戦での差は歴然としていました。

モノは使われる状況を考えて設計するのが基本です。
さてMD-11,1,2,15はどちらでしょうか。

Machine work

分かりやすいようにアニメ化してみました。

青いギアはモジュール0.4の24歯から
15歯のみ残した形状になっています。

赤いギアはモジュール0.4の42歯の上に
カメラへの接続爪が固定されています。(下図の灰色部分)

モーターの回転ギアトレーンを介して、
青いギアに伝わります。

青いギアの15歯分赤い歯車を駆動
 ↓
青いギアが空回り
 ↓
赤いギアはバネの力で原点復帰

このように青いギアは時計方向に回転を続け、
赤いギアは反復運動を繰り返します。

この機構のどこに問題があるかというと、
青いギアを全歯にしなかった点にあります。
その為に、どうしても位置合わせが必要になります。

上の図では回転する青いギアの歯が、
原点ストッパーで止まっている赤いギアに
衝突するように噛み合っています。

Synchronize

実際には赤いギアと青いギアの下には位置合わせのために、
凸がある円盤が青いギア側に、
凹がある円盤が赤いギア側にセットされています。

まず最初に凹凸が噛み合って、
赤いギアが動き始めて回転速度が同調してから
ギア同士が噛み合いう仕組みなっています。

ギアとは別のシンクロ機構
勘合時の衝撃で歯が欠けたり摩耗するのを防いでいます。


Trouble 1

シンクロの凹凸部分がトラブルを呼ぶのです。
凹凸部分が摩耗したり、何らか理由で位置がズレた場合に
「jaming」が発生します。
いわゆる巻上げ部分のロックです。

青いギアと赤いギアが正常な位置からギア1歯分進んでズレると、
青いギアの空転部分まで回転する前に、
赤いギアが巻上げ限界のストッパーに当たります。

こうなると青いギアには駆動がかかっても、
決してそれ以上は回転する事が出来なくなります。

Solution 1

回復方法ですが、
モードラ単体にしてカメラへの巻上げ爪を
「時計方向」に回転させます。

jamming状態においては赤いギアから、
全てギアトレーンを介してモーターまで噛み合っていますので、
ギア比の関係で回転が重くなっています。

手でも道具を使っても良いですが、
巻上げ爪を原点まで戻せば復帰します。

赤いギアの緑部分のストッパーは丈夫な構造ですので、
巻上げ爪を無理に動かすと爪が壊れますのでご注意を。

壊さない為にもモードラを分解して、
ギアトレーン側から復帰させるのが、
一番安全な方法と言えそうです。

Trouble 2

シンクロの位置がズレた場合として、
青いシンクロの爪が摩耗したり破損した場合には、
「巻上げ不足」が発生します。

青いギアと赤いギアが正常な位置からギア1歯分遅れてズレると、
青いギアが空転部分まで回転した時に、
赤いギアの巻上げが途中で止まってしまいます。

こうなると青いギアは青いギアとシンクロ出来なくなります。

Solution 2

回復方法ですが、
モードラの電源を切ってから、
カメラの巻上げレバーで巻上げを完了させます。

それでも回復しない場合には、
モードラ単体にしてカメラへの巻上げ爪を「時計方向」に回転させます。
カメラも単体にして巻上げを完了させます。



起きてはいけないギアのタイミングのズレ
万が一にも起きる事は想定されていません。

タイミングがズレてしまったら、そこで止まってしまいます。
機構設計に問題ありです。

ギアロック品は爆弾持ちです。
正常動作品を買いましょう〜

 

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