[2007.8.16]

revised [*.*.*]

Nikomat FTN

 

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Prologue

Nikomatは私が現行機だったNikon F2Aを買った頃あたりまであったようです。
Nikon F2Aを買う際にはCanon F1と、どちらにしようか迷った記憶はありますが、
Nikomatという選択肢は全く無く、前世代のものと考えていたと思います。

そんな記憶のせいでしょうか、Nikonというブランド銘のカメラは好きですが、
NikomatやNikkormatのカメラは1台も買った事もなく持っていません。

2007の春にGICO宅で彼が収穫したカメラを触っている時に、
「これが良いんだよ!」と見せられたのが、Nikomat FTNでした。

Nikomat FTNの事は知っていましたが、F一桁シリーズを数多く収集する
GICO氏が「良い」というのが不思議でした。

私はかつてニコンにオーバーホールに出して、
整備した後のF Ftnの感触の良さが忘れられません。
それに比べたらNikomatの感触なんて、高が知れていると思っていました。

GICO氏が良いという理由というは、作りと感触が良いということでした。
「ほら、触ってみな〜」
と渡されたNikomat FTNですが、ジャンクワゴンにあったそうですが、
モルトも交換され、電池も入れられしっかり整備されていました。

私の感想ですが、「予想以上に良い」感触が伝わってきました。
スレやアタリもなくきれいな角張ったボディ。
スムーズな巻き上げとシャッターの音。

これは食わず嫌いだったな・・・と思いました。


調べてみるとFTNは1967年発売です。
プロ用高級機であるFのサブ機(普及機)という位置付けだったようです。

SPECIFICATIONS

形式 
機械式35mm TTL一眼レフ レックスカメラ

発売時期
1967年10月

当時販売価格
32,500円

ファインダー形式 
ペンタプリズム固定式

シャッター

金属製縦走りフォーカルプレーン

シャッター速度
B・1〜1/1、000秒

ファインダー 
視野率92%、倍率0.86倍(50mmで無限遠時)

スクリーン
マイクロマット または スプリットマット

測光方式
TTL中央重点測光

露出制御
マニュアル

フラッシュシンクロ
シンクロ M・X 接点 (1/125以下で同調)

ミラー
クイックリターン式、ミラーアップ可能

巻上げ
1作動レバー式

巻上げ角
135°/予備角20° (分割巻き上げ不可)

巻戻し
クランク式

セルフタイマー
機械式セルフタイマー内蔵

電源
水銀電池 MR9 × 1

サイズ
幅:148×高:95×奥:54.5mm

重量
765g

レンズおよび付属品はほとんどFと共用する事が可能で、
高級一眼レフカメラの普及型を狙いながら品質、
デザインともに高級機の内容を備え、
Fを踏襲したイメージをもつところに特色があった。(ニコン談)


このNikomat FTNは
オークションにて入手。
出品時の写真を見て程度が良さそうだったので落札しました。
Nikomat FTN + NIKKOR-H 50mm F2 です。

巻上げレバーの指当てとセルフタイマーに、
黒い樹脂製カバーが付いた後期型です。
スクリーンは
、マイクロマット式が入っていました。

外観にはアタリもスレもなく一部に点錆がありますが、
程度は良い方だと思います。

ファインダーを覗いて見てもカビや曇りはありません。
モルトは劣化しており交換が必要なレベルでした。

ボディからレンズを外してみると、
カメラのミラーボックスとレンズ後端にカビが・・・

ミラーボックスをクリーニングして、カビは除去しておきます。


Shutter
軍艦部にシャッタースピードダイアルがありません。
シャッターボタンが2つあるみたいですが、
ペンタ部寄りのボタンはプレビュー用です。

シャッターは当時汎用のシャッターとして開発された、
コパルスクエアSを採用しています。

速度変換軸のギアの向きに合わせてマウント部に絞り環と
同じリング形状になって設けられています。

同じコパルスクエアSを使用している他社(TOPCON, RICOH, KONICA等)は、
速度変換軸があるセルフタイマーの上部にシャッターダイアルがあります。

こんな場所では速度が分からない・・・
実はファインダー内に速度が表示されます。


シャッタースピードリングは赤丸のレバーで動かします。
フィルム感度は青丸の小爪を動かして設定します。

Meter Coupling

ガチャガチャ(半自動開放F値設定機構)も付いています。
レンズをF5.6にして、カメラに取り付けます。
装着したら「ガチャ・ガチャ」とやる儀式が待っています。


開放F値はシャッターダイヤルにある表示部分に、
赤い指標で示されます。 (上の写真は、F2のレンズ)

Exposure Meter

ファインダー内の露出計以外に、軍艦部左側にも露出計があります。
ファインダーを見なくても露出が分かる・・・
確かにそうですが外付け露出計に馴れた人用の対策でしょうか。


Mirror Lock-up

FTNはミラーアップまで付いています。(FSでは省略されています)
Pentax SPでは露出計のSWの位置ですね。

ついつい癖で持ち上げたくなりますが、
ミラーアップはレバーを押し下げます。


Accessory Shoe

アクセサリーシューは脱着式で、
ファインダーアイピースで共締めして固定します。


アクセサリシュー単体

Synchronize Terminals

シンクロターミナルは左側面に並んでいます。

Back Latch

巻戻しクランクを持ち上げても裏蓋は開きません。
どこだ〜 と探すと左側面の下側にありました。
ちなみに裏蓋はヒンジ式になっています。

Self Timer

約8秒のセルフタイマーです。
タイマーのリリースボタンはありませんので、
シャッターでリリースします。

Foam Rubber

裏蓋のヒンジのモルトプレーンもボロボロです。


交換後
ヒンジのモルトプレーンはW5×L45mmの大きさです。
手持ちのモルトプレーンのt=3mmの厚めのものを入れましたが、
ちょっと厚かったのでt=2mmが良さそうです。

赤丸部分はモルトプレーンではありません。

赤丸部分から取り外したものです。
糸くずが出ているのでフェルトのようです。

右:劣化品
左:交換品

手持ちの黒いフェルトに両面テープを貼り付けて切り出して交換します。
サイズはW3×L7mmです。


続いて本体の裏蓋のモルトプレーンを交換します。
まるで何かが詰まっているような状態となっています。

まず古いモルトプレーンを掻き出して大まかに取り除き、
アルコールで接着剤を溶かして両面テープの基材も取り除きます。
掃除用のブラシで細かいカスも取り除きます。


幅1.5mmのモルトプレーンが必要となります。
買い置きがある筈なのですが、何所に仕舞ったのか分かりません・・・
自分で切り出します、必要な長さは150mmが2本です。

細いモルトプレーンを貼り付けなくてはいけないのですが、
GICO氏のFTNは1箇所だけねじれていたのを思い出しましたので、
F's流の「簡単・ねじれない・綺麗 貼付方法」を紹介します。

まずツールですが、「つくね」と「ねぎま」の竹串を使います。
その際に大切なのは丸棒ではなく角棒である事です。

時計のオーバーホールの際にも「掃除木」として竹串を使いますので、
時計の材料屋さんに行くと掃除専用の竹串が売っています。
買ったことはありませんが・・・

私は趣味と実益を兼ねてビールのつまみの廃物利用をします。
油断しているとゴミと思われ捨てられてしまいますので、
自分で洗って乾かしてから工具と一緒に保管しています。

ポイントは先端形状を尖り先と平先の2種類に仕上げる事です。
幅1.5mmのモルトプレーンを貼り付け際には、この平先が活躍します。

最初は裏蓋のSW等の切れ目がある部分に位置決めをし、
モルトプレーンの先端を貼り付ける作業をします。

まず竹串の平先をアルコールに漬けてから、
カメラの溝の両壁を2cm程度アルコールで濡らします。

モルトプレーンの先端をピンセットで所定の位置に合わせて、
平先の竹串で押し込みながら貼り付けます。

次にモルトプレーンの離形紙を4〜5cm剥がして、
先と同じように竹串の平先をアルコールに漬けてから、
カメラの溝の両壁を4〜5cm程度アルコールで濡らし、
モルトプレーンを平先の竹串で押し込みながら貼り付けます。

もし溝の壁に貼り付いてしまったらゆっくりと剥がし、
アルコールで両壁を濡らす手順から繰り返します。

4〜5cmという長さは、失敗しても簡単にやり直せる長さです。
そして離形紙も全部剥がさないのは、
貼り直す際にモルトプレーンを引っ張って剥がしても離形紙が
補強材の役目をする事と、無用に貼り付くのを防ぐ為です。

この作業を繰り返します。

上の画像のように終端まで作業になりましたら、
モルトプレーンの長さを合わせて切り落とし、
最後まで貼り付けましたら完了です。

この方法が、F's流の「簡単・ねじれない・綺麗 貼付方法」です。


最後はミラーボックス内のモルトプレーンを交換します。
ボロボロのモルトプレーンによってファインダーが汚れています。


ミラー部分のモルトプレーンは、
サイズは、W3×L39mm t=1.5mm です。

Battery Chamber

LR44またはSR44の電池を使えるようにカラーを作ります。


電池室はH-Dタイプの水銀電池用になっていますので、
電池室にカラーを入れておきます。


LR44を入れるとこんな感じです。
露出計にはSRを使わないと・・・なんて言われそうですね。
そういう人はSRを使って下さいね〜

F's Comment
Nikomat FTNについて、その作りの良さや感触の良さは、
他社の普及機の域を超えていると思います。
「一流メーカー」の普及機は、二流品ではありませんでした。

私がFのサブ機として考えた場合ですが、

・シャッターダイヤルの位置が違う
・シャッターボタンの位置が違う (私にはFより良い位置だと思いますが)
・プレビューボタンの位置が違う

操作系がかなり異なります。
あるべき処にあるべきものがない・・・

コストの制約がある普及機モデルNikomatといえども
統一して欲しかった部分です。

当方は一切修理は請け負っておりません。

ジャンク品は健康に良くありません。
良品を買いましょう〜

 

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