[2009.12.20]

revised [****.**.**]

Zoom-NIKKOR 43-86mm 1:3.5

 

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Lens Repair

Specifications


Zoom-NIKKOR 43-86mm F3.5
画角:53°-28°30'
明るさ:F/3.5
レンズ構成:8群11枚
絞り羽根枚数:7枚
最短撮影距離:1.2m
全長:81.5mm
最大径:66.5mm
フィルター径:52mm
質量:450g
価格 :\44,000円


Prologue
付属していたフードが欲しくて入手しました。
それはHN-5という私の中では幻のフードで、Nikon F2Aを現行品で購入した
当時には既に欠番(カタログではHN-4の次はHN-6)だったものです。

HN-5実物を見たのは初めてですし、発売時期を考えれば美品レベルです。
探していた訳ではありませんが、中古品の鉄則に従い即ゲットです。

ヨンサンハチロク用ではありませんし、製造番号を考えると時代が違い過ぎるので
何でこのフードが付属いていたのかは全くの謎です。

ヨンサンハチロクの後期型の「美品」を所有していますので、
レンズは特別欲しくはありませんでした。


ここまでハッキリとしたカビが繁殖しているのは凄いです。


製造番号から所有94万台よりやや新しい96万台です。
スレやキズがないのであまり使われていないようですが、
保管が悪かったようで外観はかなり汚れています。


ファインダー表示用の絞り値も埃とカビで汚れていました。

Repair

汚れているゴムローレットを外します。


洗剤で汚れを落としたら見違える位に綺麗になりました。


セットスクリューを外して内側がネジになっている銘板を外します。


リングナットで止まっている前玉を外そうとしたのですが固着して外せません。


前群ごと取り外します。
運良く冒頭の派手なカビは前群の背面側で発生していました。


クリーニング後は予想以上にクリアなレンズとなりました。
コーティングのダメージは極小でカビ痕は肉眼では全く気になりません。


中群のレンズにもカビがありました。
ヘリコイドのグリースは良い状態を保っていました。


ここもクリーニング後はクリアに仕上がりました。
中群の背面側にはカビはありませんでした。


ズーム・フォーカスリングはガイドナットに固定するのですが、
治具がないとガイドナットが沈み込んで締め付け出来ません。

そこでガイドと同じ幅に切った紙片をガイドに入れその上にガイドナットを
乗せて沈み込みを防止すると簡単に締め付けが可能です。
もちろん締め付け後に紙片は抜きましょう。


これで前群と中群のカビ取りは完了です。


当然のように後群にもカビが繁殖しております。
リングナットで固定されているのでマウントを外さなくても分解可能です。


絞り環も含めて汚れがありますので、マウントも含めて分解清掃します。


後群ユニットの内側にカビがありました。


分かり難いのですが、11時30分の位置にある白いものがカビです。


後群のクリーニングして、カビ取りは完了です。


レンズの次は鏡胴をクリーニングします。


トータルでクリーニングを完了した状態です。
これなら美品レベルに見えてきます。


2本並べて見ました。
左が最長時で右か最短時の状態です。


レンズキャップに違いがみられます。
右側の94万台はF2の時代まで使われていたものです。
左側の96万台はF3の時代になって変更になったものです。

オリジナルのレンズキャップだとすれば、96万台は最終期のヨンサンハチロク
という事なのかもしれません。

カビの発生していた場所です。

Lens TEST


赤枠部分を原画から切り出しています。

Nikon D200+Zoom-NIKKOR 43-86mm

画角:43mm

f:3.5
43mmの開放では周辺部で流れが発生しています。
特筆すべきは周辺画質の甘さに比べて中央の画質がしっかりしている事です。


f:5.6
絞る事で周辺部の画質は少し良くなります。


f:11
周辺の甘さが改善されます。

画角:86mm

f:3.5
43mmの開放では周辺部に流れがありましたが、86mmでは周辺部画質も良好です。


f:5.6
絞る事で周辺部が少し改善しています。


f:11
周辺部も中央並みの画質となります。f11まで絞れば解像度に不満はなくなります。


左43mm、左86mm
43mmはタル型の歪曲、86mmは糸巻き型歪曲があります。

レンズテストの原画から切り出し画像でも分かるように、特に四隅は歪曲が
顕著に現れます。 このレンズで直線的な構造物を撮るような奇特な人は、
画像処理で歪曲収差補正をしてあげてください。

下の作例のような被写体を撮る場合には、私は歪曲収差は気になりません。

Lens TEST 2

Nikon EL2で撮影したものです。

Nikon EL2 + 43-86mm  f:3.5
沖縄で撮影、極楽鳥花を開放で撮っています。


Nikon EL2 + 43-86mm  f:3.5
同じく沖縄で園比屋武御嶽石門の近くに咲いているハイビスカスです。


Nikon EL2 + 43-86mm  f:3.5
娘を撮った一枚で、絞って撮った記憶があります。
歪曲収差を逆手に取って撮った一枚です。

F's Impression

Nikon D200 + 43-86mm with HS-9

ヨンサンハチロクは50mmの代わりの「お得な」標準ズームという位置づけで、
50mmに比べて評価が低く中級機のユーザーに人気があった記憶があります。

悪いイメージしか無かったヨンサンハチロクですが、前世紀末期の1999年に
中古カメラ店の委託品で\5,000-で美品のものが目に止まり、
噂にきく悪い描写がどんなものか試したくて購入したものです。

後期型の新設計の光学系により、悪評から想像していたような描写とは
異なり、いたって常識的なものでした。

私と同時期にF2ASを購入したNobu氏も、ヨンサンハチロクの悪評知る一人で、
ヨンサンハチロクの写真について、

「43〜86で撮った写真、パソコン上で見るかぎりでは悪くはないですね
 後ボケはきたないと言えばきたないですが、当時の国産は、
 ズームでなくとも きたないものが多かったと思います」

初代の悪評が後期型まで呪いのように続いていたようです。

家族を撮ったり、日常使いのレンズとして、コストパフォーマンスの優れた
ベストセラーレンズとして有名ですから、「何で撮るか」よりも「何を撮るか」を
優先する人に受け入れられていたのではないでしょうか。


Nikon D200 + 43-86mm [43mm  f:3.5]


上の画像中央部から原画切り出してみると、レンズテストの結果の同様に
良い感じに写っていました。

このレンズの性格から上位機種を除いたDSLRのファインダーで、
このレンズのピントを「正確」に合わせる事は難しいでしょう。

私のD200はスプリットスクリーンにしているため、
MFでの正確なピント合わせが可能です。
さらにレンズテストでは、マグニファイヤーDG-2でピント合わせをしています。

これが重要なんですが、MFのピント合わせが出来る人ならヨンサンハチロクは
日の丸的な構図用と言いたい位に、中央は「しっかり」周辺は「まったり」の
写真を撮ることが出来ます。

今はほとんどのカメラがスクリーンでのピントを合わせを想定していないため、
ファインダーの明るさ優先で、ピントの山は掴みにくいスクリーンとなっています。

このページを見てこのレンズを入手したなら、MF時代のコストが掛かっている
カメラのファインダーを通して見てれば、ピントが合わせられると思います。

悪評しか知らない方に、ヨンサンハチロクの良さを見直してもらえればと思います。


当方は一切修理は請け負っておりません。

ジャンク品は健康に良くありません。
良品を買いましょう〜



 

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