レンズの分解清掃
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Aug 2006
Zoom-Nikkor 35-70mm F3.5
昭和52(1977)年発売のレンズで当時の価格9.5万円
画角 62度〜34度20分
最小絞り 22
最短撮影距離目盛り 1m
フィルター径 72mm (P=0.75)
大きさ(全長×最大径) 101×75mm
重量 540g
「2群ズーム」が最大の特徴である。
広角・標準・望遠の特色を兼ね備えた使用度の高いズームレンズ。
前後の2群が移動するズーム方式のため、
諸収差がよく補正され単焦点にも劣らぬ良好な画質が得られる。
スポーツからスナップまで用途は多彩。
米国のプロカメラマンに愛用者が多かった事で知られていました。
このレンズも米国のebayにて落札したものです。
入手時にチェックしたところ、ピントリングのグリース抜けと
点カビがある事が分かりました。
カメラとレンズは防湿庫にて保管している為、
カビの進行はない筈なので何もせずに使い続けていました。
しっかりとした作りと、程よい大きさ、使いやすい画角もあり
MFズームレンズの中では使用頻度が高い方です。
子供達も夏休みとなり、妻の実家へ里帰りした週末のこと。
この貴重な自由時間に何をするか・・・
先の湯ノ丸の撮影時に持って行ったレンズのオーバーホールを
しようと思い立ちました。
ピントリングのグリース抜けはこの当時のニコンレンズグリースの宿命です。
この当時から数回レンズグリースの変更があり、
現在のニコンのサービスのオーバーホールに出せば
耐久性のあるグリースになります。
米国から来たこのレンズは日本の物と違い「道具」として使われた可能性が高く、
リング内部に汚れも溜まっていると考えられるので内部のチェックも必要です。
カビは前群の後ろのレンズに発生しており、
ピントリングのグリースアップと同時にレンズのカビ取りをします。
両方共に前群にありますので分解を行います。
ズームと絞り部分は動作に問題がない為、後群の分解は行いません。
[1]
最初にピントリングのゴムを後ろにズラします。
ゴムリングの下に竹串を入れ、リング全周を通して胴筒との固着を外します。
少しづつゴムリングを距離環に乗せていきます。
前筒を固定しているネジが3本出てきますので、全てのネジを外します。
[2]
3本のネジを外すと前筒が外れます。(下の写真 右側)
ピントリングのゴムリングも外します。(下の写真 左側)
[3]
距離環とピントリングを接続している3本のネジを外します。
前群とピントリングの位置関係をマーキングしておきます。
[4]
距離環を後ろにズラすとピントリングのストッパーのネジが現れます。
このネジを外します。
[5]
ピントリングを回して前群を外します。
前群の後ろのレンズにカビが2ヶ所発生しています。
無水アルコールを綿棒につけてカビを取り除きます。
[6]
前群(下の写真 右側)
後群を含む本体(下の写真 左側)
ピントリングおよびレンズ部分をアルコールを綿棒につけて清掃します。
ねじ山の谷を丹念に清掃しアルミ地が見えるようにします。
清掃後にグリースを丁寧に塗布します。
グリースの種類はいろいろありますので、
耐久性のあるものを使って下さい。
種類を変えたりブレンドすると堅さの調整が可能です。
グリースについて分からない場合は、お店で売っているレンズグリースを
使うのが無難かもしれません。
そういうものは成分が分からないので私は使いませんけど。
[7]
前群を組み付けます。
前群とピントリングのマーキング位置を合わせます。
仮組してカメラに取付て無限遠が出ている事を確認します。
無限遠が出ていない時は多条ネジになっているピントリングの
噛み合い位置を変えて調整します。
[8]
ピントリングのストッパーのネジとピントリング位置関係
この位置が正規の状態です、違う場合には無限遠が出ません。
[9]
ピントリングのストッパーのネジを組み付けます。
[10]
ピントリングのゴムリングを入れます。
忘れると後からは入りません。
[11]
前筒を組み付けます。
[12]
ゴムリングを正規の位置に戻して完成です。
ピントリングのガタもなくなり、
好みのグリースにより最適なしっとり感に仕上げました。
もちろんカビも取り除き綺麗になったレンズはクリアそのものです。
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